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なぜ、グランドピアノの隣にクラビノーバCVPがあるのか

  • 執筆者の写真: Emi Watanabe
    Emi Watanabe
  • 8月18日
  • 読了時間: 11分

更新日:3 日前


         

エミズピアノスクールの教室には、グランドピアノと一緒に、ヤマハのクラビノーバCVPを置いています。現在使っているのはCVP-809という機種です。


「クラビノーバ」と聞くと、多くの方がまず、

住宅事情や置き場所、予算などの理由からアコースティックピアノを置くことが難しいときに、

その代わりとして選ぶ電子ピアノ——。

そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。


日本では、そんなイメージがとても強いように感じます。

もちろん、電子ピアノにはそうした役割もあります。


けれども、長年クラビノーバCVPに触れ、演奏し、そしてピアノレッスンに活用してきた中で、ずっと感じてきたことがあります。


それは、

CVPは、アコースティックピアノの代用品だけではない、‥ということ。

私自身は、ひとつの独立した楽器だと思っています。


そしてCVPは、

ピアノで培った演奏感覚を土台にしながら、電子楽器ならではの音色やリズム、伴奏へ世界を広げられる楽器だと思っています。





🎼ピアノとエレクトーン、二つの経験からCVPへ


私は、3歳4か月からピアノを、

小学5年生の頃からは、

当時習っていた先生の勧めもあり、

エレクトーンを習っていました。


ピアノとは違う音色、リズム、伴奏。

エレクトーンにはエレクトーンならではの魅力があり、子どもだった私は、ピアノとはまた違う音楽の楽しさを知りました。


その後、音楽高校、音楽大学へと進む中で、勉強の中心は次第にピアノになっていきました。


そして大学在学中、ヤマハのオーディションを受け、クラビノーバに関わる仕事をする機会をいただきました。

そこで出会ったのが、クラビノーバCVPでした。


初めて触れたとき、多彩な音色やリズム、自動伴奏などには、子どもの頃に電子楽器を経験していたこともあり、比較的すんなりと入っていくことができました。

ところが、弾いてみて大きく違うと感じたことがありました。


それは、ピアノにそっくりな

横並びの段差のない「鍵盤」です。


ピアノを学んできた自分にとって、指で強弱をつけ、ダンパーペダルを使い、ピアノを弾くときの感覚を大きく変えることなく演奏できることは、とても魅力的でした。


電子楽器ならではの機能がありながら、自分が長く学んできたピアノをすぐに活かせる。


私はそこに、CVPならではの面白さを感じるようになりました。




🎼「ピアノと比べる」だけでは見えてこないもの


アコースティックピアノ、とりわけグランドピアノには、弦をハンマーで打つことで生まれる響き、楽器全体の振動、そして指先から伝わる繊細な感覚があります。

私自身、ピアノを専門に学んできた一人として、その魅力をよく知っています。


だからこそ、ずっと疑問に思ってきました。


なぜCVPを、他のデジタル楽器と比較しないのだろう?


「本物のピアノと比べてどうか?」という物差しだけで見てしまえば、CVPはいつまでも「ピアノの代用品」という位置づけになります。


けれども、一つの楽器として見てみると、まったく違う魅力が見えてきます。


ピアノに似た鍵盤で、ピアノのような弾き方が出来る。


その上で、

さまざまな音色を選ぶ。

リズムを加える。

伴奏を作る。

複数のパートを録音する。

アンサンブルをする。


ピアノの演奏技術にデジタルの力を掛け合わせることで、表現できる音楽の世界を広げていく。そこに、私はCVPという楽器の大きな魅力を感じています。





🎼CVPとの出会いが、私に教えてくれたこと


ヤマハ銀座店に拠点がある、クラビノーバ事業部で仕事をしていた頃、私は演奏研修を受けながら、クラシックだけでなく、ジャズやラテンなど、さまざまなジャンルの曲をCVPで演奏しました。《サテンドール(ジャズ)》《イパネマの娘(ボサノバ)》《Tico Tico(ラテン)》なども、その中にありました。


あるとき、演奏研修でジャズの演奏を指導してくださっていた先生から、私の演奏について、

「タッチがクラシックになっている」

という指摘を受けました。

私にとって、とても印象に残った言葉です。


ジャズのリズムや伴奏と合わせれば、それだけでジャズになるわけではない。

演奏する人自身が、ジャズにふさわしいタッチやフレージング、ビート感を身につけなければ、音楽は変わらない。


私はそこで、ジャンルによってピアノの弾き方そのものを変えることを学びました。

クラシックにはクラシックの演奏法。

ジャズにはジャズの演奏法。

ラテンにはラテンのフィーリング。


さらに、同じ「ピアノ」の音だけでも何種類も搭載されており、演奏する曲のジャンルによってピアノの音色を選ぶこともできます。


演奏者自身が弾き方を工夫し、その上にデジタル楽器の音色やリズム、伴奏の力を選び加えて、自分が思い描く音楽へ近づけていく。

これは、私にとって新しい音楽体験でした。


《サテンドール》を演奏したときには、ベースラインを自分で演奏して録音し、スイングのリズムと組み合わせ、その自作の伴奏データに合わせてピアノのパートを生演奏しました。


一台のCVPで、まるでピアノトリオで演奏しているような音楽を作っていく。

何よりピアノのパートは、他のどの電子楽器で演奏するより、

かなり本物のピアノに近いタッチで演奏できる。

その経験は、後の私のピアノ指導にも大きくつながっていくことになりました。



教室。2台を並べて設置しています
教室。2台を並べて設置しています

🎼演奏する楽器から、レッスンを支える楽器へ


その後、自宅にCVPを購入しました。

そしてピアノを教える仕事を続けていく中で、CVPは少しずつ「自分が演奏するための楽器」から、「ピアノレッスンを支え、広げてくれる楽器」へと役割を変えていきました。


現在、私の教室でも、レッスンの中心にあるのはグランドピアノです。

生徒さんには、ピアノできちんと基礎を学び、楽譜を読み、自分の音楽を奏でていってほしい。そこはずっと変わりません。


でも、ピアノの音だけのレッスンでは、なかなか伝えきれないことや、なかなか抜け出せない難題に直面することも出て来ます。


そんなときに私はよく

CVPを使ったレッスンを試しています。





🎼レッスンで広がる、さまざまな活用


CVPは、さまざまな形でレッスンを支えてくれます。

これまでの実例を少しご紹介したいと思います。




♬幼児期のリズム——音楽の中で感じる


小さなお子さんには、リズムカードで「たん・たん・たん・うん」とリズムを叩くだけでなく、そのリズムを実際の音楽に合わせて叩く体験をしてもらっています。

リズムを単独で練習するだけでなく、実際に拍やテンポ、メロディーの流れの中で使ってみる。音楽に合わせてリズムを叩き続けてみる。

… すると、楽譜と体の感覚が少しずつつながっていき、自然と演奏の中で、その感覚を活かせるようになって行きます。一曲を弾ききる集中力もついて行きます。




♬ポップスやジャズ——ビートとフィーリングを身体でつかむ


ポップスでは、メトロノームだけでは身につきにくい「バックビート」を、リアルなドラムの音を感じながら練習します。

譜読みの段階からビートの中で弾くことで、「ビートに演奏を収める」という感覚が自然に育っていきます。


ジャズでも同じです。ピアノだけでタッチやフレージングを学んだあと、CVPでジャズバンドのような伴奏を加えて弾いてみると、読譜や言葉では伝わりにくいフィーリングがつかみやすくなります。




♬合唱コンクール——16ビートの曲の伴奏


最近の学校の合唱伴奏は、16ビートや細かなリズムの要素を含む曲が多くあります。そんなとき、ビートについての解説をしたり、メトロノームの代わりに、リズム機能を使った練習を取り入れます。その他に、曲に近い自動伴奏を使い、フィルインやブレイクが何かということを、実際の音で説明しています。言葉で伝えるよりも、どんなものなのかを、生徒さんにわかりやすく伝えることができます。


本番前の仕上げの段階では、講師がCVPのクワイア(人が歌っている声)の音色で、合唱パートを弾き、生徒さんがグランドピアノで伴奏の練習をします。

実際に合唱を伴奏する状況に近い環境を作り、必要な場合には、本番前最後のレッスンまで、リズム機能を使った練習を行います。楽譜に書かれた音だけでなく、原曲のフィーリングに音楽を近づけて行くことが、ピアノの音だけのレッスンより、かなり出来ていると感じています




強弱やフレーズ——別の音色だから気づけることもある


強弱をつけることが、どうしても上手く出来なくて、どんな曲もすべて強い音で弾いてしまっていた生徒さんに、強弱が明白な、モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》というピアノ曲ではない、弦楽四重奏の曲を使って、録音した弦楽奏の伴奏に合わせて、ファーストバイオリンのパートを右手だけで演奏してもらったことがあります。


1年近くあれこれとピアノで試しましたがなかなか改善が見られず苦肉の策という感じだったのですが、録音データと一緒に演奏してみると、他のすべてのパートが弱くなっているのに、自分のパートの音だけが強く出てしまっていることに気づき始めました。

この方法が、本人が「自分の音が飛び出している」と、自分の音に、違和感を感じるきっかけとなりました。


また、スラーが苦手だった生徒さんには、サン=サーンスの《白鳥》をチェロの音色で演奏してもらったことがあります。クラビノーバでチェロの音色を使って演奏すると、減衰音のピアノとは音の性質が異なり、鍵盤を離すと音が切れてしまうことが、はっきりと分かるため、ピアノで弾くよりも「音をつなげて弾く」感覚を掴みやすくなります。


これらは、自分が出している音がどんな音なのか、気づく機会となり、別の角度から改善のポイントを見つける一つのきっかけになった事例です。





♬「弾けた」のその先へ


ブルグミュラー「25の練習曲」のレッスンでは、まずグランドピアノできちんとした解釈で1曲を、作品として丁寧に仕上げていきます。

合格した後に、フルートの音色と合わせて、ピアノとフルートのアンサンブル風にしたり、弦楽器の音を使ってコンチェルト風にしたり。またCVPもピアノの音色にして、2台ピアノのように演奏することをしています。


「早くこの曲を仕上げて、先生とアンサンブルしたい。」

そんな小さな目標が、曲を仕上げる意欲を高め、日々の練習につながることも多くあります。



🎼CVPで体験して ピアノで活かす


ここまでいくつかの実際にあった事例をご紹介しました。


▪幼児期のリズム。

▪ポップスのビート。

▪ジャズのフィーリング。

▪合唱伴奏。

▪強弱。

▪スラーやフレーズ。

▪クラシック作品を仕上げた後のアンサンブル。


一見すると、すべて違うレッスンです。

けれども、共通するものがあります。


それは、CVPで体験して、ピアノで活かす。

ということです。


生徒さんたちは皆、

日頃グランドピアノできちんとピアノを学んでいます。


その上で、ピアノだけではなかなか

伝わりにくいことがあったとき、

別の音色で弾いてみる。

リズムの中に入ってみる。

バンドと一緒に演奏してみる。

アンサンブルの中で自分の音を聴いてみる。


それによって何かに気づいたら、それを活かしてピアノへ戻る。

CVPは、そんな「別の入口」「別のアプローチ」を作ってくれる楽器なのだと思っています。





🎼そして何より、楽しい


ここまで教育的なことをたくさん書いてきました。

でも、35年以上CVPをレッスンで使い続けてみて、とても大切だと思っていることがあります。


CVPを使ったレッスンは、

音楽の楽しさを味わうことができるのです。

やってみると理屈抜きでとても楽しい!


リズムだけを叩くより、音楽の中で叩く方が楽しい。

一人でメロディーを弾くより、

バンドの中で弾く方がワクワクすることがある。

ブルクミュラーが合格したあと、

先生とコンチェルトのように演奏したら、

いつもの曲が違って聴こえる。


その「楽しい」が、

「もう一回やりたい。」

「次の曲も早く仕上げたい。」

「もっと上手になりたい。」

につながることがあります。


そして、楽しみながら繰り返しているうちに、

頑張ってるのに上手く行かず、迷路に迷い込んでしまったような苦しい練習に、一筋の光が見えることがあります。




🎼なぜ、グランドピアノの隣にCVPがあるのか


CVPがあれば、

楽器が生徒さんを魔法のように変えてくれるわけではありません。


▪先生が考える。

▪必要なら教材やデータを作る。

▪生徒さん自身も練習する。努力する。


試行錯誤の中で、発見があり、糸口をみつけ、少しずつできるようになっていく。


ピアノだけで十分に学べることも、

もちろんたくさんあります。


それでも、ときどき、

アプローチを変えることで、道が開けることがあります。


「できない」で終わらせず、

「ほかの入口はないだろうか」

「もっと別の効果的な方法はないだろうか」

と考えることができる。


私にとってCVPは、そんなときに力を貸してくれる楽器です。


一つの独立したデジタル楽器としての魅力、

ピアノレッスンに工夫次第で様々に活用出来ること、

ピアノに近く、ピアノと同じような感覚で演奏することが出来るデジタル楽器であることを知っていただけたらと願っています。


CVPの体験を、ピアノの演奏に活かす。

それが、今たどり着いているレッスンでの使い方であり、

教室で、グランドピアノの隣にクラビノーバCVPがある理由です。





最後までお読みくださいまして

ありがとうございました。


湘南茅ヶ崎エミズピアノスクール




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